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産経新聞 1月17日(木)14時57分配信

昨年末、東京・品川のキリスト品川教会の舞台に立って恋の曲を数々歌いあげた。バラードをしっとりと表すかと思えばかわいい少女を想起させる場面も。

 90年代「夢見る少女じゃいられない」「恋心」などヒットを次々と発表し、ガールズロックの象徴で語られるパンチのある姿とはまた違った一面が立ち上る。

 そして来月6日、4年ぶりのアルバム「今事記」を発表する。全10曲の歌詞を自らの言葉でつづった。

 「今の自分の心を紡いだ1枚になりました。だから今事記。2年前の3月11日以降、時間をかけて作り、等身大を歌っています」

 東日本大震災が起きたその日、デビュー16年目を迎えて新たに結成したガールズバンドのイベントを東京で行う予定にしていた。

 「そのときまでは自分が感じる楽しいこと格好いいことを表現したらいい、と思っていました。しかしあの日をきっかけにその考えは崩れ去った。今やるべきことは何か、と自問するようになった」と振り返る。

 これまで大きなヒットソングに恵まれてきた。「ノリの良い、感情を何かにぶつけるような曲で多くの人に支持されました。けれど私には人の心にそっと寄り添う曲が少ないのではないかと思い至った。そういう曲を震災後の日本で歌いたいと切実に思った」

 やがて心に浮かんだのが《だいちにふるえ こころにさいた わたしのいのち あなたのいのち…てんとちをむすびましょう ともにわをつくりましょう》という歌詞。スローテンポな優しい心地のメロディーに合わせ「ことのは」という楽曲になった。

 同年8月、茨城県立カシマサッカースタジアムで開かれたチャリティーコンサートで初披露。聴衆の反応を見て「やっと人の心に添える歌で人前に立てる」と自信を持った。

 新アルバムには「ことのは」をはじめ「一人一人が誰かの光る存在だってこと」を伝える「ヒカリノミ」、人の再生を信じてドラマティックに歌う「Butterfly(バタフライ)」など大きなテーマを多様なメロディーで歌う。

 「ロックシンガーの相川七瀬を好きな方には、何が起きたの?と驚かれるかもしれない」とつぶやくが、言葉一つ一つが弾むように表現されたリズム感や絶対的な歌唱力は変わらずこの1枚にもある。

 そして「ヒカリノミ」は岡山県と長崎県、鹿児島県に伝わる赤米神事の応援ソングにもなり、昨秋には和歌山・熊野本宮大社で作曲の亀井登志夫と奉納演奏も行った。

 「私の歌を待ってくれる所、必要とされる所で歌わせていただきたい」

 そう言って毅然とステージに向かっていく後ろ姿には、歌姫の神々しさが宿っていた。(文・安田奈緒美)

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